伝説のヒーロー・孫悟空(そんごくう)が五行山に封じ込められて500年。町には妖怪がたびたび現れ、子供をさらっていた。ある日、お師匠さまのもとで修行中のリュウアーは、妖怪に襲われた女の子・おチビちゃんを助ける途中、たまたま迷い込んだ五行山で、偶然にも孫悟空を眠りから目覚めさせてしまう!ところが悟空の力は封印されたままで、本来のパワーを発揮できずにいた。やがて悟空、リュウアーそして猪八戒(ちょはっかい)の3人は長安へ旅に出るのだが…。はたして悟空は、かつてのチカラを取り戻し、真のヒーローになることができるのか!?
アジア中で愛される『西遊記』が、新たに生まれ変わった!
日本アニメに負けない深みのあるストーリーと、ハリウッドにも劣らない3DCG、そして中国得意のカンフーアクションで、2015年に中国制作アニメ歴代1位となる興収192億円の大ヒット!(※1)さらに、東京アニメアワードフェスティバル2016では、コンペティション部門長編アニメーション優秀賞を受賞。日本語吹替版は宮崎吾朗監督(『ゲド戦記』『コクリコ坂から』)が制作監修に決定し、錚々たる声優陣が集結。新たなヒーロー伝説が、ここから始まる!
(※1 中国票房調べより)
アニメ映画監督。23年に及ぶ3Dアニメ制作の経験を有する。CCTV2006年春節(旧暦の大晦日)特別番組のオープニング映像制作、アメリカ版ゲーム『スパイダーマン』の宣伝映像監督を担当。日本からの招待を受け大阪アジア芸術祭の審査員を務める。北京テレビ局2011年アニメ春節特別番組監督、インターネットゲーム『傭兵天下』のCG宣伝アニメ監督などを担当。資金難などの苦難を乗り越え8年をかけて本作を制作。
1967年、東京生まれ。信州大学農学部森林工学科卒業後、建設コンサルタントとして公園緑地や都市緑化などの計画、設計に従事。その後1998年より三鷹の森ジブリ美術館の総合デザインを手がけ、2001年より2005年6月まで同美術館の館長を務める。2006年公開のスタジオジブリ作品『ゲド戦記』でアニメーション映画を初監督。2011年『コクリコ坂から』で2作目の監督を務める。2014年秋から翌春にかけて、NHK・BSプレミアムでTVアニメーションシリーズ初監督作品「山賊の娘ローニャ」(制作・著作:NHK、ドワンゴ)を発表。2004年度芸術選奨文部科学大臣新人賞芸術振興部門を受賞。2016年、世界の優れたテレビ番組に贈られる国際エミー賞で「山賊の娘ローニャ」が子どもアニメーション部門最優秀賞を受賞。
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本作品は「今までと違う西遊記」である。本来の「西遊記」とは、三蔵法師と弟子の悟空ら四人が共に九世の輪廻を経験し、信仰を求めていくストーリーだ。
本作は「成長」の物語。なぜかというと、現代人は「西遊記」原作の経緯に対して常に疑問を抱えている。まず、孫悟空は空を飛び地に潜り、七十二般の変化術を身につけた神通力者であるにも関わらず、どうして虚弱な人間の供になって伝説の経典を取りに行ったのか。彼は何物も恐れず、天界すら騒がせ、500年間山に封印されても動じない人物であるのに、どうして単なる「緊箍呪(悟空の頭の輪を戒めのためしめる呪文)」によって服従させられたのか。また、三蔵法師の如き年若い僧侶は諸々の感情や欲望を経験したことがなく、どうして急に悟りを開き大義のために身を投げたのか。このような展開は本当にリアルと考えられるだろうか。
実は原作では「九世の輪廻転生」という点に対して言及はあるものの、具体的に話が展開されるわけではない。そこで、我々は本作品を通じて悟空ら四人の成長の過程を再現したいと考えた。
物語は、三蔵法師とその一行の「出会い」と、信仰を通して彼らが仲間として成長していく様を描いたものだ。本作品を見た観客は、この子供(リュウアー)が将来三蔵法師になると感じるに違いない。三蔵法師は転生を通してこの世の苦しみと取経の必要性を実感し、自らの信仰と歩む道を少しずつ確立していく。また、悟空もそのようなリュウアーの強さに心を動かされ、自由を信仰する気持ちがリュウアーを信仰する気持ちに変わっていく。最後はついに「取経の旅に出る」話である。物語を三つに分けて筋道の基盤を固めてこそ、西天取経の旅を描くことが可能だと思われた。500年間も如来に封印された悟空は、きっと闘志を失い、世の移り変わりを経験した中年男のように夢を忘れ、もはやヒーローではなくなってしまっているはずである。彼の心の中に沈む美しいものや神通力は、何らかの外因によって呼び起こされる必要がある。そのため、我々は孫悟空の闘志を奮起させるよう一人の子供を設定した。この話では、三蔵法師はまだ「リュウアー」という孤児である。小さい頃から「斉天大聖」の物語を聞いて育ち、悟空こそが彼の憧れの父親でありヒーローである。そして、このような心中に愛慕の情を抱え、ヒーローと正義を固く信じるリュウアーとの出会いによって、悟空はかつての勇気を取り戻し、利己的な信仰を捨て、他人を救うことで昔の自分を取り戻し、ついに「スーパーヒーロー」へと成長することができた。「成長」こそが本来のテーマなのである。
〈武器と特技…72変化、筋斗雲、如意棒〉
神々との戦いののち、お釈迦様によって捉えられ、五行山に500年もの間眠っていた。リュウアーの手により目覚めるも、真のチカラは封印されている。伝説のヒーロー。
1965年生まれ、宮崎県出身。アニメだけでなく、ゲームや洋画の吹き替えなど幅広く活躍。主な出演作に「ハイキュー!!セカンドシーズン」(16年/MBS/中島正義役)「すべてはFになる」(15年/CX/新藤清二役)、洋画では『テッド』シリーズの主演も務めるほどの実力派。代表作は大人気ゲームシリーズ「龍が如く」シリーズの柏木修役が有名。
町中の子供をさらう妖怪たちのボス。
さらに強力な力を手に入れるため、皆既日食の日に子供たちを生贄にし、ある儀式を目論んでいる。
悪の中の悪。
神奈川県出身。1988年に「どんどんドメルとロン」(88〜89年/TX)で声優デビュー。主な出演作に「楽しいムーミン一家」(90〜92年/TX/スナフキン役)、「天空戦記シュラト」(89〜90年/TX/夜叉王ガイ役)、「銀魂」(06年〜/TX/高杉晋助役)、「ジョジョの奇妙な冒険」(12〜16年/MXほか/ディオ・ブランドー役)など多数。シリアスからギャグまでこなす、日本を代表する声優のひとり。
赤ん坊の頃に妖怪に襲われ、父と母を失った少年。
五行山に閉じ込められていた孫悟空を偶然に復活させ、いっしょに旅をすることになる。
力は弱いが、正義感は強い。
2007年生まれ、東京都出身。ドラマ「お兄ちゃん、ガチャ」(15年/NTV)でリク役としてレギュラー出演を果たす。近年の出演作に、「貴族探偵」(17年/CX)、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(17年/NHK)、「家政婦のミタゾノ」(16年/EX)、「早子先生、結婚するって本当ですか?」(16年/CX)など。今作が本格的な声優初挑戦となる。
川で赤ん坊のリュウアーを拾い育てた杔鉢僧。
慎ましく、長安の地で身を寄り添って生活している。
リュウアーにとっては、優しくキビシイ、育ての親。
1944年生まれ、東京都出身。劇団「前進座」五代目・故嵐芳三郎の三男として生まれ、子役時代から映画やテレビドラマに出演。80年代頃から現在まで数多くのアニメや吹き替えなどで活躍。主な出演作に、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズ(95年/TX/キール・ローレンツ役)、映画『ゴッド・ファーザー』(72年/マーロン・ブランド役)、「新スタートレック」シリーズ(87〜94年/ピカード艦長役)など。
〈武器と特技…36変化〉
500年前、孫悟空との戦いに負け、地上に落ちて豚の姿にされてしまう。自由自在に変身することができる。臆病で見栄っぱり。ハラペコな食いしん坊。
1969年生まれ、東京都出身。昴演劇学校を経て、97年より劇団昴に在籍し、多くの公演に出演。アニメだけでなく海外ドラマや洋画の吹き替えも多い。主な出演作に、『テッド(PG12版)』(13年/テッド役)、『ズートピア』(16年/ジェリー・ジャンボーJr.役)、アニメ「忍たま乱太郎」(93年〜/NHK/真毛野押美役・3代目)、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」(11〜17年/ミアのソロス役など)。
混沌に仕える女妖怪。
混沌の妖術で人間の姿に化け、リュウアーたちからおチビちゃんを奪おうとする。
いっしょに行動する男妖怪がヘマばかりするので、いつもイライラ。
東京都出身。吹き替え、アニメ、ナレーションを中心に、舞台にも出演するなど多方面で活躍。主な出演作に、映画『インターステラー』(14年/アメリア・ブランド役)、『WALL・E(ウォーリー)』 (08年/イヴ役)、アニメ「ストライクウィッチーズ」 (08年/ゲルトルート・バルクホルン役)、『劇場版NARUTO-ナルト-ブラッド・プリズン- 』(11年/竜舌役)など多数。
『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』がようやく日本で公開されます。中国での公開前、僕は自分の子供が生まれるのを待っていた時のことを思い出していました。あのただ待つだけの間のもどかしさ、自分の宝を世に出せる誇らしさ、期待や不安、焦り。とにかくいろいろな気持ちが、嵐のように僕の心に渦巻いていました。そして今その子供が成長し、一人で海外に行くと言い出しました。しかもそこは、競争がもっと激しく傷つくこともたくさんあるだろうところです。やはり僕はまた子供の未来を心配し、そして期待をする、少し過保護な父親の気持ちであります。
日本のアニメ業界は世界で一番成熟していると思います。僕自身、日本のアニメが大好きです。日本のアニメには世界のどの国のものより深刻な主題と大人が観るにふさわしい表現があり、たくさん参考にすべきところがあります。『西遊記』を制作している時、目指したのは中国の伝統的な美学を改めて突き詰め、物語の背景として生かすことでした。東方文化の魅力・美は日中両国の文化に共通するものです。『西遊記』に託した僕らの思いが、日本の皆さんの心に届きますように。
僕は敬愛する日本の映画ファンの皆さんにこそ、僕らの『西遊記』のテーマ、意図を正確に伝えたいと考えていました。それにはどうすればいいのか?これは日本での公開にあたり、僕らが一番重要視していたことです。ここで宮崎吾朗さんが日本語吹替版の制作監修を引き受けてくださったことに、本当に感謝しています。
吾朗監督と初めてお会いしたのは、昨年の東京藝術大学大学院のイベントでの対談でのことでした。その打ち上げの際に、僕は思い切って日本語吹替版の制作監修と、主題歌と挿入歌を新たに作ってほしいと彼に直訴しました。吾朗監督はこの突然の依頼を、ただの思いつきと思ったかもしれない。しかし実は僕にとってこの「合作」は、長年の夢でした。吾朗監督の才能が日本語吹替版に加わることで、『西遊記』が意味することを正しく日本の皆さんに伝えることができると信じています。吾朗監督、本当にありがとうございました。
中国での『西遊記』のファンは、長く赤い布を首に巻き裾をたなびかせている悟空の姿を愛しています。この赤い布が日中両国の映画ファンの心をつなぐような絆になることを願っています。文化を結び、情感を結び、国境を越えて、アニメを愛する心を結びますように。
田監督との初対面は、東京藝術大学横浜校でのイベントで対談をした時だった。中国で3DCGアニメーション映画をつくっている人の対談相手に、なぜ僕が選ばれたのか?おそらく、その前年に僕が「山賊の娘ローニャ」を3DCGで作っていたからだろう。けれど、僕のような3DCGの新参者ではなく、もっと他に適任者がいたのではないかと思わずにはいられなかった。
そして対談を前に僕は、『西遊記之大聖帰来』を見せてもらった。それは、驚くほど面白かった。3DCGアニメーションといっても、僕らが見慣れた日本や米国のものとは一味違う。キャラクターのデザインや独特な色彩、カンフーのようなアクション等々。さらには、とにかく絵がよく動いていた。普通なら妥協せざるを得ないような、恐ろしく時間と手間のかかる動きのカットを、すべて動かしている。僕は画面からあふれてくる、アニメーション映画をつくりたい!という作り手の熱気に圧倒された。僕らはこんな風に熱い気持ちでアニメーションに取り組んでいるだろうかと、自問せざるをえなかった。こんな作品を生み出した田監督とは、どんな人なのだろう?
イベント当日、初めて顔を合わせた田監督は、たいへん物静かな人だった。スタジオにこもっている時が一番幸せな顔をしているんじゃないだろうか。イベントの打ち上げの宴席でも、僕の前に座った田監督はほとんど自分から話をしなかった。なので、僕は一生懸命に『西遊記之大聖帰来』の魅力について話すことになった。すると田監督も、作品についての苦労話や、作品に込める想いをぼそぼそと、しかしとても嬉しそうに話してくれた(後で配給会社の人から聞いたところによると、「あんなに話す田監督は初めて見た」と言うのだが……)。
そして宴もたけなわという頃、不意に田監督が僕に切りだした。
「あなたに日本語吹替版を監督して欲しい」と。
驚く僕に畳み掛けるように、彼は日本語版向けに劇中歌と主題歌も新しく作って欲しいと言う。僕が作品の楽曲の作詞をしていることを彼は知っていて、影響を受けたのだとも。こんな頼まれごとをされるのなら、あまり褒めたりするんじゃなかったと思ったのは後の祭り。酔いの勢いも手伝って、僕は彼の依頼をうけることにした。
こうして出来上がったのが『西遊記之大聖帰来』日本語吹替版。原語版の魅力を損ねず、日本の観客への橋渡しとなることを今は願うばかり。
この場をお借りして、日本語吹替版に力を貸して下さった皆さんに感謝を。そして、こんな僕に、大事な作品の吹替を任せてくれた、無口で熱い男、田監督に感謝です。